HOME > 司法試験・予備試験 > 司法試験 | 傾向と対策 > 司法試験 傾向と対策 | 論文式試験の出題傾向と対策

司法試験 傾向と対策 | 論文式試験の出題傾向と対策

 司法試験・司法試験予備試験の論文式試験の出題形式・特徴,出題傾向を踏まえ,その対策を説明します。
 予備試験では,法律実務基礎科目も試験科目となっていますが,基本的な勉強法は法律基本科目と変わりません。
 ただし,予備試験の一般教養科目は,特徴的な出題形式となっていますので別途説明します。

法律基本科目

総論

 法律基本科目で求められる知識の範囲は,短答式試験より狭いといえます。
しかし,そもそも解答形式が選択式ではなく,論述式であるため,法学に関する知識・理解を法律文書という特殊な文書の形で表現しなければなりません。また,問われる知識の範囲が広いわけではないのですが,専門家の間でも議論が尽くされていないような未知の問題が出題されます。
 見たことも聞いたこともない問題について,基本的な知識をベースとして,自分の頭で考えて答えを導き出す能力(論理的思考力・応用力)と,自分で考えた結論を法律文書の形で表現する能力(文章表現力)の双方が求められます。
 このように,論文式試験問題を解くことができるようになるためには,基本的な知識のインプットを前提として,問題文を読んでから実際に答案を作成するまでの技術も身につけなければなりません。
上記のように,論文式試験も「試験」である以上,ある程度客観的な正解があります。客観的な正解があるということは,それに対応する解法があるということです。そして,解法があるということは,それを身に着けるための学習法もあるということです。具体的には以下の①~④の流れで学習するのが効率的です。 

 ① 知識をインプットする
論文式試験の問題は,法律を使って解いていかなければなりません。そのためには,最低限の法学の基本的な知識が必要になります。
そこで,まずはその知識をインプットすることが必要になります。日本史・世界史,英語,数学……,どんな科目でも問いに答えることができるようになるためには,その科目の知識のインプットをする必要があります。それと同じことです。
知識のインプットのための講座が,総合講義100,総合講義300,論証の使い方を学ぶための講座が,「論証集の『使い方』」になります。
ちなみに,知識はインプットしてそれで終わりではありません。下記の各過程で自分の知識や理解が不十分であることが判明すると思います。アウトプットをした後は,必ずインプットに戻り,テキスト等を用いて知識や理解を定着させましょう。

 ② 論文答案の「書き方」を学ぶ
 知識のインプットと同時に進めるべきなのが,論文答案の「書き方」を学ぶことです。
 法学の論文式試験は,大学入試における日本史・世界史の記述式の試験のように暗記した知識をただ単に答案用紙に書き写せば○がもらえるようなものではなく,暗記した知識を「使って」解答しなければならないという意味で,「知識」のほかに「書き方」も学ぶ必要があります。
 数学の試験で公式を覚えただけでは問題が解けないように,論文式試験もこの「書き方」が分からなければ書けるようになりません。論文答案の「書き方」を学ぶための講座が,「論文答案の『書き方』」になります。

 ③ 重要問題を習得する
 答案の「書き方」を学んだ後は,実践が必要です。
 数学では,公式を習得した後は,練習問題で公式を使いこなすことができるように練習したのだと思います。
 法学の論文式試験でも同じです。各科目について,基本的な条文の使いこなしが問われる問題や,重要な最高裁判所の判例を素材とした問題など,重要問題(典型問題・基本問題)と呼ばれる問題があり,それが数学の練習問題に相当します。
 司法試験や予備試験の論文式試験では,短答式試験ほどではないにせよ,要求される知識の範囲がかなり広いので,こなさなければならない練習問題の数も自然と多くなってしまいます。これが法学の論文式試験の1つの特徴です。
 予備試験では,条文や判例をそのまま使うだけで解けてしまう簡単な問題は出題されないのでは?と思われるかもしれませんが,基本がなければ応用もありません。重要問題をしっかりと習得しなければ,司法試験で問われるような難易度の高い問題に対応することはできません。
 重要問題を習得するための講座が,重要問題習得講座になります。
 ちなみに,上記のように,重要問題で訓練を積む過程で知識や理解に問題があれば,インプットに戻る必要がありますが,解き方に問題があるのであれば,答案の「書き方」に戻って確認するようにしましょう。

 ④ 実際に答案を作成する
 重要問題で十分訓練を積んだ後は,いよいよ実際に答案を作成していきます。大学受験において,数学などでも練習問題を解いた後は,応用度の高い演習問題を解いたことと思います。
 ただし,大学受験との重要な違いがあります。大学受験の場合には,あまり制限時間を気にして演習問題を解いたことはなかったと思います。大学受験などでは,年に数回の模擬試験がありますが,制限時間を意識するのはその時くらいでしょうか。
 これに対して,司法試験の場合には,模擬試験に相当する予備校が提供する「答練」というものがあり,非常に回数が多いのが特徴です(本番と同じタイムテーブルで実施する模擬試験も別途実施されています)。毎週のように,場合によっては毎日のように,模擬試験を受けている感覚です。
 司法試験は,アウトプットが非常に難しい試験なので,インプットだけではなくアウトプットも反復練習する必要があります。毎日,毎週のように模擬試験があるというと奇異に感じるかもしれませんが,理にかなった学習法なのです。
 答案を作成する場合には,できる限り本番に近い環境に身を置く必要があります。試験本番では,制限時間内で答案を仕上げなければならないので,時間無制限で答案を作成しても実践的な訓練にはなりません。
 そのため,制限時間を意識する,六法以外は何も見ないで解くなど,できる限り本番に近い環境を作り出すように意識してみてください。実際に答案を作成するための講座が,旧司法試験・予備試験型答練,司法試験型答練になります。

各科目の勉強法

以下では各科目の勉強法について説明します。こちらはある程度学習が進んでいる方を対象としているので,これから学習を始める方は飛ばしてしまってください。

憲法

「判例学習の重要性と主張反論の独特な出題形式」
 司法試験や予備試験の憲法においては,判例を題材とし,その理解を問う問題が多く出題されているため,判例学習が特に重要です。
 それに加え,憲法は,その出題形式に大きな特徴があります。具体的には,原告(被告人),被告(検察官),私見について,三者それぞれの立場から,憲法上の主張を論じさせるような出題形式になっていることです。
 以上から,憲法の論文式試験の勉強法としては,有名判例について,その事案や判旨を把握するとともに,三者間の主張反論において,誰の主張に生かすことができるのかを常に意識しながら学習することが重要です。

行政法

 「個別法の『仕組み解釈』を身につける」
 行政法も,憲法と同様に,有名な判例を題材とした問題が多く出題されているため,判例学習が特に重要です。
 また,行政法の特徴として,試験現場で,未知の個別法に対して,法令の趣旨や構造等の仕組みを紐解く,「仕組み解釈」を行うことを求められる問題が出題されます。
 「仕組み解釈」を身につけるためにも,判例学習が最適です。
 判例学習の際には,事案や判旨を把握することはもちろんのこと,問題となっている法令に対して,どのような条文を挙げ,どのような理由により,どのようにその仕組みを解釈しているのかを意識して,学習することが重要です。
 なお,司法試験の行政法では,問題文に「誘導」が付されています。「誘導」とは,その問題について,どのような方向性で解答すべきかという指示・ヒントのことをいいます(会話形式で呈示されていることがほとんどです)。この「誘導」をいかに素早く読み解き,論ずべき事項を特定できるのか,という事務処理能力も重要となります。

民法

 「基本的知識と当事者の立場に立った考察」
 民法は,学習しなければならない知識や範囲が多岐にわたるだけでなく,司法試験や予備試験では見たこともないような未知の問題が出題される傾向にあるため,対策が難しい科目の一つです。
 まずは,普段の学習において,論文式試験で出題される範囲の知識を地道に身につけることが重要です。次に,本試験で出題される未知の問題に対応する下地を作るために,典型問題(重要問題)をしっかりと習得してください。
 これらは他の科目でも重要なのですが,上記のような特徴を持つ民法では特に重要です。焦らず地道に学習を進めてください。
 上記のような基本的な学習を終えた後,本試験で出題される未知の問題を処理する際には,当事者の生の主張と結論の妥当性を考えてみるとよいでしょう。難しい問題になればなるほど,正解に至る筋道が見えにくくなります。そこで,当事者の主張から出発し,法的根拠を特定するという民法の基本に戻るべきです。その上で,どちらの当事者の主張が認められるのかという結論の妥当性を考えてみることによって,論じるべき筋道が見えてきます。

商法

「条文知識と典型論点に対する理解の重要性」
 商法の学習の中心は,会社法です。
 会社法は,条文の多さや,その規定の複雑さ,さらにはイメージの持ちにくさから,学習を始めたばかりの方にとって,取っつきにくい科目です。 
 もっとも,司法試験や予備試験の過去問を分析すると,問われる条文や知識の範囲がそれほど広くないことに気が付きます。論点もいわゆる典型論点が出題されることが多く,民法のような未知の問題が問われることはあまりありません。
 そのため,普段の勉強においても,細かい知識や論点にとらわれることなく,頻繁に問われる条文や典型論点についての理解を磐石にするという方法をお勧めします。また,条文数が多く,規定も複雑なので,学習に際してはこまめに条文を引くことを意識してください。
 なお,商法で出題される法律には,会社法以外にも商法総則・商行為(商法典),手形小切手法がありますが,論文式試験における出題頻度は高くありません。
過去問において頻出の条文や典型論点だけを押さえる程度に止めておきましょう。

民事訴訟法

 「手続きの流れと実体法とのリンクを意識する」
 民事訴訟法は,これといった問題処理のパターンがなく,また出題形式が多様であるため,対策が難しい科目です。
 もっとも,民法のような複数の分野にまたがる融合問題が出題されることは多くありません。どの分野のどの知識や論点を聞いているのかを特定することができれば,比較的早く正解に至ることが可能です。
 そのため,日ごろの学習においてもどの分野にどのような知識・論点があるのかを意識することが重要です。
 その基本となるのが手続きの流れと実体法との関係性です。
 手続きの流れとは,訴え提起→口頭弁論→判決→上訴又は確定というどの段階の問題なのかということです。また,実体法との関係性とは,実体法上どのような権利利益・法律関係が問題となっており(訴訟物の特定,処分権主義),それがどのような要件によって成立するのかを意識するということです(弁論主義・立証責任)。
 なお,司法試験の民事訴訟法にも「誘導」があります。ただし,行政法の「誘導」とは異なり,解答のヒントというよりは,方向性の限定がなされています。過去問の中には,「最高裁判例の立場には立つな」という指示が記載されていることもありました。この「誘導」に従って解答しなければ,正しい知識・理解が表現されていたとしても正解に至ることができませんので,「誘導」には十分に注意する必要があります。

刑法

 「事案の迅速・正確な処理」
 刑法は,理論的には難解ですが,他の科目と比べ,答案の書き方がある程度固まっており,出題形式も例年同じです。また,未知の論点が問われることがほとんどないため,点数を取りやすい科目です。自分のよって立つ見解が固まったら,後はひたすら問題演習を積んでください。
 刑法の問題は,未知の論点が問われることが少ない分,多数の論点を処理しなければならない問題が多いといえます。そのため,時間内に万遍なく論点を網羅するという事務処理能力が求められます。
 問題演習の際には,時間や答案スペースの使い方に十分注意してください。

刑事訴訟法

 「判例理解の正確性」
 刑事訴訟法も,刑法と同様に,未知の論点が問われることは少なく,点数を取りやすい科目です。
 もっとも,刑法より,重要判例の事案を少し変えた,判例の射程を問う問題が出題される傾向にあります。そのため,判例学習の際には,判例の事案を正確に押さえ,その射程距離を理解するように心がけましょう。

法律実務基礎科目

総論

 法律実務基礎科目では,法律基本科目で出題される知識をより実務的な観点から使いこなせるかという点を問う問題が出題されます。
 法律実務基礎科目民事では,民事訴訟実務と法曹倫理,法律実務基礎科目刑事では,刑事訴訟実務が出題されています。
 ザックリとしたイメージですが,民事訴訟実務は民法と民事訴訟法を掛け合わせたもの,刑事訴訟実務は刑法と刑事訴訟法を掛け合わせたものをベースとして,実務的な能力を問うものだと考えればよいでしょう。なお,法曹倫理は,弁護士としての職業倫理を問うものと誤解されがちですが,弁護士法や日弁連が定めている弁護士職務基本規程の条文の使いこなしを求めるものです。
 法律実務基礎科目民事では民法・民事訴訟法,法律実務基礎科目刑事では刑法・刑事訴訟法の知識が前提とされていますので,法律基本科目の学習が終わった後に,知識のインプットを行うと良いでしょう。
 なお,論文答案作成のための技術が必要になるという点では,法律基本科目と大差ありません。ただし,やや特殊なスタイルで論述しなければなりませんので,その点は別途対策をする必要があります。

各科目の勉強法

 以下では各科目の勉強法について説明します。こちらはある程度学習が進んでいる方を対象としているので,これから学習を始める方は飛ばしてしまってください。

民事

 「要件事実を意識して,民法・民事訴訟法との学習効率を高める」
 実務基礎科目民事は,実際の民事事件を処理するに当たって遭遇する場面を切り取って,その場面で,実務家(主に弁護士)であれば,どのような立ち振る舞いをするべきかを解答する問題です。
内容は,民法・民事訴訟法の知識を前提として,主に要件事実についての理解が問われます。学習に当たっては,裁判官が執筆した「新問題研究要件事実」(法曹会)という書籍を読むのがよいでしょう。この本は,要件事実を学ぶほとんど全ての人が手にとるもので,平易な文章で要件事実の初歩的な知識が書かれていますので,これから要件事実の学習を始める方にとっては,必携の書です。
もっとも,「新問題研究要件事実」(法曹会)のみでは,知識として十分ではありません。さらにステップアップを図るための教材は,難易度が高いものが多いので,学習に当たり,苦戦する方が多いです。一般的には,「紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造 改訂」(法曹会)が利用されるのですが,説明が省略されている部分が多く,独学で進めるのは難しいかもしれません。「新問題研究要件事実」(法曹会)の通読を終えたら,過去問,予備校の答練を活用し,問題演習中心の学習に切り替えるのもよいと思います。
 本科目は,民法と民事訴訟法の知識を前提とするため,学習の順序として,後手に回ってしまいがちです。しかし,要件事実を意識することで,民法・民事訴訟法の理解が促進されるという相乗効果も期待できます。そこで,民法・民事訴訟法を一通り学習した段階で,できるだけ早く本試験の問題を見て,形式に慣れておくのがよいでしょう。

刑事

 「教材が充実していない事実認定は,実戦で習得」
 実務基礎科目刑事は,実際の刑事事件を処理するに当たって遭遇する場面を切り取って,犯罪の成立の有無や裁判の手続に関する知識について解答する問題です。内容は,事実認定の問題や,刑事訴訟法の知識を前提とした手続の問題に大別でき,中心は事実認定問題になります。
 事実認定の問題は,非常に難易度の高い問題が出題されています。にもかかわらず,現在,刑事事実認定に関する初学者向けの教材は,数える程度しか出版されておらず,予備試験で問われているような問題に対応するための知識がまとまっている教材はほとんど存在しない状況です。一方,事実認定では,何らかの知識を暗記する必要はそれほどなく,むしろ,その手法を習得することが必要になります。
 そこで,過去問や予備校の答練で問題演習を積み,解説講義を聞くという実戦を繰り返すことが重要になります。
 一方,手続の問題は,刑事訴訟法の知識が問われますので,刑事訴訟法の学習の延長線で対応できるため,学習しやすいと思います。

一般教養科目

 上記のように,問題文に要約・反論等の対象が掲載されていますので,事前に暗記をしておく必要はありません。事前準備は過去問検討だけに絞るなど,必要最小限度に止めるのがよいと思います。