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司法試験 傾向と対策 | 論文式試験の出題形式と特徴

 司法試験・司法試験予備試験の論文式試験の出題形式・特徴を説明します。
 予備試験では,法律実務基礎科目も試験科目となっていますが,基本的な勉強法は法律基本科目と変わりません。
 ただし,予備試験の一般教養科目は,特徴的な出題形式となっていますので別途説明します。

法律科目(法律基本科目・法律実務基礎科目)

 論文式試験という出題形式には,なかなか馴染みがないと思いますが,長文の問題文を読んだ上で,1500字程度の論述により,解答するものです。
 これについては,百聞は一見に如かずということで,実際に予備試験で出題された問題を見てみましょう。もちろん,内容は全く分からないと思いますが,イメージだけつかんでもらえれば結構です。

[予備試験 平成23年度民法]
 Aは,平成20年3月5日,自己の所有する甲土地について税金の滞納による差押えを免れるため,息子Bの承諾を得て,AからBへの甲土地の売買契約を仮装し,売買を原因とするB名義の所有権移転登記をした。次いで,Bは,Aに無断で,甲土地の上に乙建物を建築し,同年11月7日,乙建物についてB名義の保存登記をし,同日から乙建物に居住するようになった。
 Bは,自己の経営する会社の業績が悪化したため,その資金を調達するために,平成21年5月23日,乙建物を700万円でCに売却し,C名義の所有権移転登記をするとともに,同日,Cとの間で,甲土地について建物の所有を目的とする賃貸借契約(賃料月額12万円)を締結し,乙建物をCに引き渡した。この賃貸借契約の締結に際して,Cは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知っていた。
 その後,さらに資金を必要としたBは,同年10月9日,甲土地をDに代金1000万円で売却し,D名義の所有権移転登記をした。この売買契約の締結に際して,Dは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知らず,それを知らないことについて過失もなかった。
 同年12月16日,Aが急死し,その唯一の相続人であるBがAの一切の権利義務を相続した。この場合において,Dは,Cに対し,甲土地の所有権に基づいて,甲土地の明渡しを求めることができるかを論ぜよ。

 この問題が標準的な問題文の長さです。

 もっと長い問題文が出題されていることもあります。

[予備試験平成26年度商法]
 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

 1.X株式会社(以下「X社」という。)は,携帯電話機の製造及び販売を行う取締役会設置会社であり,普通株式のみを発行している。X社の発行可能株式総数は100万株であり,発行済株式の総数は30万株である。また,X社は,会社法上の公開会社であるが,金融商品取引所にその発行する株式を上場していない。X社の取締役は,A,B,Cほか2名の計5名であり,その代表取締役は,Aのみである。

 2.Y株式会社(以下「Y社」という。)は,携帯電話機用のバッテリーの製造及び販売を行う取締役会設置会社であり,その製造するバッテリーをX社に納入している。Y社は,古くからX社と取引関係があり,また,X社株式5万1千株(発行済株式の総数の17%)を有している。
  Bは,Y社の創業者で,その発行済株式の総数の90%を有しているが,平成20年以降,代表権のない取締役となっている。また,Bは,X社株式5万1千株(発行済株式の総数の17%)を有している。

 3.Z株式会社(以下「Z社」という。)は,携帯電話機用のバッテリーの製造及び販売を行う取締役会設置会社であり,Cがその代表取締役である。
  Z社は,Y社と同様に,その製造するバッテリーをX社に納入しているが,Y社と比較するとX社と取引を始めた時期は遅く,最近になってその取引量を伸ばしてきている。なお,Z社は,X社株式を有していない。

 4.X社は,平成25年末頃から,経営状態が悪化し,急きょ10億円の資金が必要となった。そこで,Aは,その資金を調達する方法についてBに相談した。Bは,市場実勢よりもやや高い金利によることとなるが,5億円であればY社がX社に貸し付けることができると述べた。

 5.そこで,平成26年1月下旬,X社の取締役会が開催され,取締役5名が出席した。Y社からの借入れの決定については,X社とY社との関係が強化されることを警戒して,Cのみが反対したが,他の4名の取締役の賛成により決議が成立した。この取締役会の決定に基づき,X社は,Y社から5億円を借り入れた。

 6.Y社のX社に対する貸付金の原資は,Bが自己の資産を担保に金融機関から借り入れた5億円であり,Bは,この5億円をそのままY社に貸し付けていた。Y社がX社に貸し付ける際の金利は,Bが金融機関から借り入れた際の金利に若干の上乗せがされたものであった。なお,Bは,これらの事情をAに伝えたことはなく,X社の取締役会においても説明していなかった。

 7.他方,Cは,Aに対し,X社の募集株式を引き受ける方法であれば,不足する5億円の資金をZ社が提供することができると述べた。

 8.そこで,同年2月上旬,X社の取締役会が開催され,1株当たりの払込金額を5000円として,10万株の新株を発行し,その全株式をZ社に割り当てることを決定した。この決定については,Bのみが反対したが,他の4名の取締役の賛成により決議が成立した。
  X社は,この募集株式の発行に当たり,株主総会の決議は経なかったが,募集事項の決定時及び新株発行時のX社の1株当たりの価値は,1万円を下ることはなかった。また,X社はこの募集株式の発行について,適法に公告を行っている。

 9.Cは,同月下旬,上記6の事情を知るに至った。

〔設問1〕
Cは,平成26年3月に開催されたX社の取締役会において,X社のY社からの借入れが無効であると主張している。この主張の当否について論じなさい。

〔設問2〕
Bは,X社のZ社に対する募集株式の発行の効力が生じた後,訴えを提起してその発行が無効であると主張している。この主張の当否について論じなさい。

 法律実務基礎科目の問題や,予備試験合格後の司法試験の問題になるとさらに長文の事例問題が出題されています。

予備試験 平成26年度法律実務基礎科目刑事
司法試験 平成26年度刑法

 論文式試験では,通常は六法(司法試験用に編集されたもの)が貸与されます(法科大学院入試では,貸与されない代わりに,問題文に必要な条文が掲げられている場合もあります)。試験場では六法は自由に参照することができます。大学入試など今までの試験では,おそらく何かを参照しながら解答するということはほとんどなかったと思いますので,論文式試験はハード面において少し特殊であるといえます。
 そして,司法試験では,1問につきA4の答案用紙8枚,予備試験では1問につきA4の答案用紙4枚(一般教養科目は2枚以内)が配布されます。この答案用紙を司法試験では1問2時間,予備試験では1問当たり70分で埋めていくことになります(ちなみに,法科大学院入試では,大学院ごとにバラバラです)。

答案用紙

 内容面についてみていくと,論文式試験といっても,上に挙げた問題のように,請求できるか/できないか(予備試験平成23年度民法),適当か/不当か(予備試験平成26年度民法)というYes/No方式で答えられるような設問もあります。「論文」というと,法学に関する持論か何かを滔々と述べなければならないものと思われがちですが,実はただの試験なのです。司法試験は,法曹になるための能力を図るための試験ですので,ある程度客観的な正解があり,それに対応した採点基準があります。試験であるという本質においては,皆さんが今まで解いてきた試験問題と変わりがありません。
とはいえ,この問題文を,六法を片手に読み解き,法律用語を用いて,答案を完成させなければなりませんし,また,Yes/Noに至る筋道が複数あり,しかもそのどちらも正解であるという場合も多いです。その意味で,やはりやや異質な試験です。
 また,司法試験受験業界では,「一行問題」と呼ばれている問題があります。これを明確に定義することは難しいのですが,事例型の問題ではなく,ある事項について説明させるタイプの問題というくらいで捉えておいていただければ十分です。例えば,「基本的人権について述べよ。」というような非常にザックリとした出題がなされることもあります。こちらの方が,いわゆる「論文」のイメージに近い問題かもしれません。ただし,この一行問題は,予備試験ではほとんど出題されていません。
 事例型の問題でも,必ずしもYes/No方式で答えられるわけではありません。例えば,上記の法律実務基礎科目刑事の問題はYes/No方式で答えられる問題ではありません。Yes/No方式で答えられる問題の方が少ないかもしれません。
司法試験は試験である以上,今まで皆さんが解いてきた試験問題と本質的には変わらないのですが,以上のような点において少し特殊な試験であるといえます。

一般教養科目

 主に社会科学からの出題で,特定の人物の思想や考え方についての文章を読ませた上で,その考え方を要約させたり,反論させたり,その思想を現代社会に当てはめさせたりする出題が続いており,小論文試験に近い問題です。

[平成26年度予備試験論文式試験一般教養科目]
 エリート(選良)という言葉は,今日,両義的な意味合いで用いられる。例えば,「トップエリートの養成」というと,肯定的な含意がある。これに対して,「エリート意識が高い」というと,否定的な含意がある。エリートをどう捉えるかは,社会をどう捉えるかと同等の,極めて根源的な問題の一つである。
「エリートとは何か」をめぐる,以下の二つの文章を読んで,後記の各設問に答えなさい。

[A]「エリートとは何か」は,それぞれの社会の持つ歴史的・地理的な制約によって,その様相が異なる問題である。
これに関連して,イタリアの経済学者・社会学者V.F.D.パレートは,「エリートの周流」(circulation of elites)という理論を提示している。この理論は,エリートが周流的に交替する(旧エリートが衰退し,新エリートが興隆する)ことを,一つの社会法則として提示しようとしたものである。
パレートはこう説く。エリートは,本来,少数者(特定の階級)の利益を代表している。新エリートは,当初(旧エリートの階級性を批判しつつ)多数者の利益を代表して登場する。しかし,旧エリートと交替すると,今度は少数者の利益を代表するようになる,と(「社会学理論のひとつの応用」1900年による。)。

〔設問1〕
[A]の文章中のパレートの理論を参照しつつ,近代社会において「学歴主義」(学歴を人の能力の評価尺度とすること)が果たしてきた役割について,15行程度で論じなさい。
[B] 現代社会(ここでは,「現代社会」という言葉を,古典的な近代社会に対して近代的な近代社会という意味内容で用いている。)が,いかなる様相を持つ社会であるかは,当該社会に生きる私たちにとって現実的な問題である。例えば,アメリカの経営学者P.F.ドラッカーは,「ポスト資本主義社会」という概念を提示している。ドラッカーはこう説く。従来の資本主義社会では,土地・労働・資本の三つが,生産の資源であった。しかし,今日のポスト資本主義社会では,知識が生産の資源になる。資本主義社会では,資本家と労働者が,中心的な階級区分であった。しかし,ポスト資本主義社会では,知識労働者とサービス労働者が中心的な階級区分になる,と(『ポスト資本主義社会』1993年による。)。
このドラッカーの主張は,エリートとは何かを論じる目的でされたものではないが,現代社会において「エリートとは何か」を考える上で,一つの素材となり得るものである。

〔設問2〕
[B]の文章中のドラッカーの主張を素材として,現代日本社会におけるエリートとは何かについて,10行程度で論じなさい。

[予備試験平成25年度論文式試験一般教養科目]
 次の文章は,和辻哲郎『倫理学』(1937~49年)の一節である。これを読んで,後記の各設問に答えなさい。

(省略)
〔設問1〕
 この文章を15行程度で要約しなさい。
〔設問2〕
 本文で,著者は,「土地の共同」に基づくコミュニティ(共同体)について論じている。それとともに,著者は,「文化の共同」(共通の言語,芸術,学問,宗教,風習,制度,道徳等)に基づくコミュニティの存在をも想定している。このことを踏まえて,コミュニティの現在について,20行程度で論述しなさい。