建設業界でキャリアアップを目指すなら、管工事施工管理技士の資格取得は有力な選択肢です。

しかし「具体的にどんな資格なのか」「取得するとどんなメリットがあるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。

本記事では、管工事施工管理技士の基礎知識から仕事内容、取得メリット、試験の詳細まで徹底解説します。

資格取得を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

管工事施工管理技士とは？

管工事施工管理技士は、配管工事における施工管理の専門家として認められる国家資格です。

国土交通省が管轄し、建設業法第27条に基づいて実施される技術検定に合格することで取得できます。

管工事とは、私たちの生活に欠かせない設備に関する配管工事全般を指します。

具体的には、冷暖房設備、空調設備、給排水設備、ガス配管設備、ダクト工事、浄化槽設備などが該当するでしょう。

管工事施工管理技士は、管工事の工事現場において施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理などを担当します。
配管工事のスペシャリストとして、建設現場では欠かせない存在です。

資格には1級と2級があり、それぞれのできる業務範囲が異なります。

1級取得者は監理技術者として大規模な工事を統括でき、2級取得者は主任技術者として中小規模の工事を管理できる仕組みです。

建築物には必ず配管設備が必要なため、管工事施工管理技士の需要は常に高い状態が続いています。今後も安定したニーズが見込まれる将来性の高い資格といえるでしょう。

管工事施工管理技士の仕事内容は？何ができる？

管工事施工管理技士の主な役割は、配管工事現場における施工管理全般です。

• 施工計画の作成と工程管理
• 品質管理・安全管理・原価管理
• 主任技術者・監理技術者としての役割

具体的な仕事内容を詳しく見ていきましょう。

施工計画の作成と工程管理

施工計画書の作成は、管工事施工管理技士の重要な業務の一つです。

工事の全体像を把握し、どの順序でどのように作業を進めるか綿密に計画します。

工程管理では、計画通りに工事が進んでいるか常にチェックし、遅れが生じた場合は迅速に対応しなければなりません。職人や協力会社との調整を行い、納期を守るための采配が求められます。

資材の手配や搬入時期の管理も重要な業務です。必要な資材が不足すると工事が止まってしまうため、適切なタイミングで発注・納品される体制を整えます。

天候や他の工事との兼ね合いで予定が変更になることも多く、柔軟な対応力が必要とされるでしょう。

現場の状況を的確に判断し、最適な工程を組み直す判断力が求められます。

品質管理・安全管理・原価管理

品質管理では、施工された配管設備が設計図通りに正しく機能するか確認します。試運転調整や自主検査を実施し、基準を満たしているか厳しくチェックする役割です。

安全管理は現場で最も重視される業務といえるでしょう。作業員の安全を守るため、危険箇所の確認や安全教育の実施、保護具の着用チェックなどを徹底します。

事故が発生すると工事が中断するだけでなく、人命に関わる重大な問題となるため、常に高い安全意識を持って現場を管理しなければなりません。

原価管理では、人件費や資材費、機械費などのコストを計算し、予算内で工事を完了させる責任があります。利益を確保しながら品質を維持するバランス感覚が重要です。

環境管理として、騒音や振動、廃棄物の処理なども適切に管理します。近隣住民への配慮も施工管理技士の大切な仕事の一つといえるでしょう。

主任技術者・監理技術者としての役割

管工事施工管理技士を取得すると、主任技術者や監理技術者として現場に配置されます。

この役割は建設業法で定められており、一定規模以上の工事では必ず配置が義務付けられているのです。

主任技術者は、工事現場における技術上の管理を行う責任者です。2級管工事施工管理技士以上の資格があれば、主任技術者として活動できます。

監理技術者は、元請業者が下請契約の総額5,000万円以上（建築一式工事は8,000万円以上）の工事を行う際に配置が必要です。
1級管工事施工管理技士のみが監理技術者になれる仕組みとなっています。

監理技術者は複数の下請業者を統括し、工事全体を総合的にマネジメントします。高度な技術力と管理能力が求められる重要なポジションといえるでしょう。

専任技術者としても活躍でき、建設業許可を受けるために営業所ごとに配置が義務付けられています。2級は一般建設業、1級は特定建設業の専任技術者として認められる制度です。

管工事施工管理技士と他の施工管理技士の違い

施工管理技士には管工事以外にも複数の種類があり、それぞれ専門分野が異なります。

主な違いを理解しておくと、自分に合った資格選びの参考になるでしょう。

資格名	専門分野	主な管理対象工事
建築施工管理技士	建築工事全般	躯体工事、仕上げ工事、内装工事など建物の構造部分から内装まで
土木施工管理技士	土木工事	道路、橋梁、ダム、トンネル、河川などのインフラ整備工事
管工事施工管理技士	配管・設備工事	冷暖房設備、空調設備、給排水設備、ガス配管、ダクト工事
電気工事施工管理技士	電気設備工事	受変電設備、照明設備、動力設備、通信設備などの電気工事
造園施工管理技士	造園工事	公園、庭園、緑地、植栽、景観づくりなどの緑化工事
電気通信工事施工管理技士	通信設備工事	電話、インターネット、放送設備などの通信インフラ工事
建設機械施工管理技士	建設機械の運転・管理	ブルドーザー、ショベルカーなど建設機械を使用する工事

管工事施工管理技士の特徴は、配管設備という生活インフラに直結する分野を扱う点です。

すべての建築物に配管設備が必要なため、需要が安定している強みがあります。

また、管工事は専門性が高く、水道やガス、空調などの知識が求められるため、スキルを身につければ長期的なキャリア形成が可能でしょう。

電気工事施工管理技士と合わせて取得すると、設備工事全般に対応できるため市場価値が高まります。

空調設備に付随する受変電設備まで管理できる技術者は少なく、企業からの需要が非常に高いのです。

管工事施工管理技士を取得するメリット

管工事施工管理技士の資格取得には、キャリア面でも収入面でも多くのメリットがあります。

• キャリアアップと転職で有利になる
• 資格手当による収入アップが期待できる
• 大規模工事に携われる
• 関連資格が取得しやすくなる

キャリアアップと転職で有利になる

資格を取得すると、配管工事における高度な技術と知識を持つ専門家として認められます。社内での評価が上がり、昇進や昇給のチャンスが広がるでしょう。

建設会社にとって、管工事施工管理技士は貴重な人材です。

公共工事の入札に参加する際、経営事項審査で技術力評価の加点対象となるため、企業は積極的に資格保持者を採用します。

1級管工事施工管理技士は1人あたり5点、2級は2点が加算される仕組みです。（参照：【経審】業種別技術職員コード表）
企業の受注力に直結するため、資格手当や待遇面で優遇される傾向があります。

転職市場でも需要が高く、好条件での転職が期待できるでしょう。大手ゼネコンやサブコン、設備工事会社など、幅広い選択肢から自分に合った職場を選べます。

平均年収は400万円から600万円程度ですが、経験やスキルによって800万円以上を目指すことも可能です。1級を取得すれば、さらに年収アップの可能性が高まります。

資格手当による収入アップが期待できる

多くの建設会社では、管工事施工管理技士の資格保持者に対して資格手当を支給しています。

月額1万円から3万円程度の手当が一般的で、年間では12万円から36万円の収入増となるでしょう。

1級と2級では手当の金額に差があり、1級の方が高額に設定されている企業がほとんどです。監理技術者資格証を取得し、さらに講習を受講すると追加の手当が支給される場合もあります。

資格手当は基本給とは別に支給されるため、確実な収入アップにつながります。ボーナスの計算基準にも影響する企業が多く、長期的に見れば大きな差になるはずです。

また、複数の資格を組み合わせることで、さらに手当が増額される仕組みを採用している企業もあるでしょう。
給水装置工事主任技術者などの関連資格も併せて取得すれば、より高収入を狙えます。

大規模工事に携われる

1級管工事施工管理技士を取得すると、監理技術者として大規模な工事に携われるようになります。

商業施設、病院、オフィスビルなど、社会的に意義のあるプロジェクトに関われる点は大きな魅力でしょう。

大規模工事では、複数の協力会社や職人をまとめる統率力が求められます。責任は重くなりますが、その分やりがいも大きく、技術者としての成長につながるのです。

2級の場合でも、中小規模の工事で主任技術者として活躍できます。マンションや店舗、工場などの配管工事を担当し、確実にスキルを磨いていけるでしょう。

工事規模が大きくなれば、それに伴って報酬も上がる傾向にあります。より高度な技術が必要とされる案件に挑戦できる点は、キャリア形成において重要な要素です。

関連資格が取得しやすくなる

管工事施工管理技士の資格を持っていると、関連する他の資格を取得しやすくなります。

受験資格の要件が緩和されたり、試験科目の一部が免除されたりする制度があるためです。

建築設備士は、1級管工事施工管理技士取得後に2年以上の実務経験があれば受験資格が得られます。設備設計の専門家として、さらに活躍の場を広げられるでしょう。

給水装置工事主任技術者試験では、管工事施工管理技士の資格保持者は試験科目の一部が免除されます。水道工事に特化したスキルを身につけたい方には有益です。

電気工事施工管理技士と併せて取得すれば、設備工事全般に対応できる貴重な人材となります。空調設備に付随する受変電設備の知識を持つ技術者は少なく、市場価値が非常に高まるでしょう。

複数の資格を保有することで、仕事の幅が広がり、より多様な案件に対応できるようになります。キャリアの選択肢が増え、長期的な視点でも大きなメリットといえます。

管工事施工管理技士になるには？

管工事施工管理技士になるためには、国家試験に合格する必要があります。

ここでは、受験資格や試験内容について詳しく解説します。

受験資格と実務経験

管工事施工管理技士の試験は、第一次検定と第二次検定に分かれています。

令和6年度から受験資格が大きく変更され、より多くの方が挑戦しやすくなりました。

1級の第一次検定は、受験年度末時点で19歳以上であれば実務経験なしで受験できます。

学生でも挑戦可能になり、早期からキャリアプランを描けるようになりました。

第二次検定には実務経験が必要です。大学の指定学科卒業後3年以上、高等学校の指定学科卒業後8年以上など、学歴によって必要な実務経験年数が異なります。

2級の第一次検定も、17歳以上であれば誰でも受験可能です。高校生でも受験でき、実際に合格している方もいます。早めに資格取得を目指せる点は大きなメリットでしょう。

2級の第二次検定には実務経験が求められますが、1級に比べて要件が緩やかです。

まずは2級から取得し、経験を積んでから1級にステップアップする流れが一般的といえます。

実務経験には、施工管理や設計、積算などの管工事に関する業務が含まれます。
現場代理人や主任技術者としての指導監督的実務経験も評価されるため、日々の業務を意識的に取り組むことが重要です。

試験内容と難易度

管工事施工管理技士の試験は、第一次検定と第二次検定に分かれており、それぞれ異なる内容が出題されます。

	項目	1級	2級
第一次検定	形式	マークシート方式	マークシート方式
	問題数	全73問中60問を選択解答	全52問中40問を選択解答
	出題科目	機械工学、施工管理法、法規	機械工学、施工管理法、法規
	合格基準	全体60%以上、かつ施工管理法50%以上	60%以上の正答率
	合格率	35%～52%（年度により変動）	55%～69%（年度により変動）
第二次検定	形式	記述式	記述式
	出題内容	施工要領図、工程管理、安全管理など実務に基づく問題	施工管理法に関する知識、経験記述
	合格基準	60%以上の得点	60%以上の得点
	合格率	50%以上	40%～82%（年度により変動）
試験日程		第一次検定と第二次検定は別日程	第一次検定と第二次検定は同日受験可能
試験実施回数		年1回	年1回

1級の難易度は2級より高く、特に第一次検定の合格率は年度によって大きく変動します。

2級は第一次検定の合格率が比較的高いものの、第二次検定の難易度が年度によって変わる傾向にあります。記述式の対策を重点的に行うことが合格への近道でしょう。

過去問を繰り返し解き、出題傾向を把握することが効果的な勉強法です。テキストは1冊に絞り、何度も反復学習することで知識を定着させます。

第二次検定の経験記述は、試験前に文章を作成しておくことをおすすめします。本番で一から考える時間はないため、事前準備が合否を分けるポイントとなるでしょう。

試験は年1回しか実施されないため、計画的に学習を進めることが重要です。試験日から逆算してスケジュールを組み、確実に合格を目指しましょう。

まとめ

管工事施工管理技士は、配管工事における施工管理のプロフェッショナルとして認められる国家資格です。

本コラムで解説した、管工事施工管理技士の要点をまとめます。

• 管工事施工管理技士とは、配管工事の施工管理を担うプロ認定の国家資格
• 冷暖房や給排水、ガス配管など生活に不可欠な設備を管理
• 年収アップや転職の優位性など多くのメリットがある
• 1級は監理技術者として大規模工事を統括できる
• まずは2級から挑戦し、段階的に目指す方法が現実的
• 受験資格の緩和により早期キャリア形成が可能
• 人手不足の建設業界で需要・将来性が高く、取得する価値は十分にある

配管工事のスペシャリストとして、社会を支えるインフラ整備に貢献したい方は、ぜひ管工事施工管理技士の資格取得に挑戦してみてください。