今回は、東北農林専門職大学 農業経営学科で准教授を務めておられる石黒 亮先生へインタビューを行いました。
山形県のさくらんぼ新品種「やまがた紅王」の生みの親としても知られる石黒先生に、品種改良との出会いや研究のやりがい、農業の未来と高校生へのメッセージをお話しいただいています。
目次
- 先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?
- 研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。
- 現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?
- その研究は、私たちの社会や日常生活とどのようにつながっていますか?
- 研究を進める中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
- 貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。
- 先生の授業やゼミでは、学生にどのようなことを大切にしてほしいと考えていますか?
- 貴学部に在籍する学生の特徴や雰囲気を教えてください。どのような学生が多いですか?
- 貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?
- 進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。
先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?
品種改良を勉強したいと思うきっかけとなったのは、山形県鶴岡市出身の東北大学農学研究所教授・菅洋(すげひろし)氏の著書「稲を作った人々(昭和58年発刊)」です。これは、山形県庄内地方の稲の民間育種を描いた一冊です。
良食味米のルーツとなる「亀の尾」は1893年(明治26年)に発見され、その後「亀の尾」を母本とした交雑育種が明治時代から庄内地方で行われていたことに感銘を受けました。
私の出身地域の酒田市では、稲作農家が「おいしくて、作りやすい品種」を追求していました。亀の尾をはじめとしてその後作られたそれぞれの品種は、一時代を築いた品種です。
世の中が品種によって変わっていくことに大きな感動を覚えました。
研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。
高校生時代だったと思います。地元(山形県酒田市)で働きたいというのが一番の理由です。
実家が稲作農家であり、父がJA職員であったことから、自然と農業に関する仕事に興味を持つようになりました。
一時期は教員になりたいとも考えていましたが、当時は稲作をはじめ農産物の生産技術が盛んに進化している時代であったため、「農家のためになる技術を開発し、指導したい」という気持ちが強まっていきました。
そんなとき、藤島町(現鶴岡市)に山形県立農業試験場庄内支場(現山形県農業総合研究センター水田農業研究所)があることを教えてもらい「将来は山形県の農業技術職員として試験場で働きたい」と思うようになりました。
現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?
山形県の技術職員であった頃は、果物(さくらんぼ・西洋なし・りんご等)の品種改良に取り組んでいました。
また、温暖化対策として、これまで山形県では作れなかったかんきつ類の栽培試験にも取り組みました。
県の技術職員として過ごした36年のうち、27年間を試験場での研究に費やしています。
現在は、国際感覚を身につけた果樹後継者の育成に取り組んでいます。
また、県の試験場時代には着手できなかった加工専用果樹の省力栽培技術の開発と販路の拡大について、他大学の先生と連携しながら研究を進めております。
その研究は、私たちの社会や日常生活とどのようにつながっていますか?
農業経営者の数は右肩下がりに減少しています。しかしながら、農産物の総生産量・総販売額の減少は、農業経営者の減少の仕方よりも緩やかです。
これは、農業経営体のそれぞれが工夫しながら経営規模を拡大しているからです。
品種改良は「おいしさ」だけでなく「農家の方が作りやすい品種」を追求することも大きな目標です。作りやすい品種は生産性の向上につながります。
人口減少時代においても農業への参入を促すために、品種改良などの技術開発はキーテクノロジーになると考えています。
そして最終的には、皆さんに安定して食糧を供給していくことにつながっていきます。
研究を進める中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
技術開発の途中はトライ&エラーの繰り返しで、大変なことが多いです。品種改良では、一度にたくさんの個体の品質を調査します。
苦労は多いですが、信念を持って取り組んでいます。
そして、栽培技術や品種が世の中の役に立っている様子を見たとき、「やっていてよかった。自分の考えは間違いなかった」と思える瞬間が一番のやりがいです。
具体的には、自身が携わったさくらんぼ品種「やまがた紅王」が生産者の皆さんに認められてたくさん栽培され、店頭に並んだ「やまがた紅王」を消費者の方々が手に取って笑顔になっている様子を見ると、研究に携わってよかったと実感します。
貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。
東北農林専門職大学の特徴は「臨地実務実習」にあります。臨地実務実習とは、実際の経営体等で生産と経営を学ぶ実習のことです。
実習期間は2年次から4年次までの3年間、計90日間にわたる長期的な実習となっています。
山形県を中心に350ヶ所以上の実習先を有しており、学生が本当に学びたい分野で実習を受けることができます。
学生一人ひとりの希望を丁寧に聞き取りし、実習先をマッチングさせていく「きめ細やかさ」は、東北農林専門職大学ならではの強みではないでしょうか。
先生の授業やゼミでは、学生にどのようなことを大切にしてほしいと考えていますか?
「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、まずは農業を好きになってもらえるよう心がけています。
これからはスマート農業やAI活用など、新たなイノベーションが農業経営を大きく変えていくと考えています。
いろいろな技術がどんどん進化する中で、そのような技術を活用して「楽しく」農業をしていけるよう、学生たちに提案するよう心がけています。
貴学部に在籍する学生の特徴や雰囲気を教えてください。どのような学生が多いですか?
東北農林専門職大学の学生は、サークル単位・友人単位・個人と、様々な形で野菜作りに励んでいます。
中には地域の方から耕作放棄地となってしまった土地をお借りし、野菜の栽培にチャレンジしているグループもあります。
栽培した野菜は地域の産直などで販売しており、大好評とのことです。
貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?
東北農林専門職大学は実習が多い大学です。可能な範囲で「農業」との接点を感じておくとよいでしょう。
実際の農作業だけでなく、販売されている農業生産物がどこで作られているのかを調べるだけでもかまいません。
できれば体験なども経験しておくと、入学後の学びがより深まるでしょう。
また、一般の大学農学部は理系コースからの入学が多いですが、東北農林専門職大学は経営を学び、将来は農業法人(会社)の社長を目指すような学びをしていきます。文系コースからの入学も可能です。
進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。
まずは、いろんな方のお話を聞いてみてください。そして、ビビッとくるものを探してみてください。
ここからが大事なのですが、まずやってみる(実践する)ことが重要です。すると、自分で思い描いていたこととは違った、面白い発見があるかもしれません。
「農業」でビビッときたら、まずは東北農林専門職大学で一緒に勉強してみましょう。
農業は汚くて大変なものではなく、意外と面白いものかもしれません。そこに「経営」という視点を加えてビジネスにしていく。
農業は「職業として選ばれるもの」に変わってきています。皆さんと楽しく学びたいと思っています。