今回は、静岡産業大学経営学部で教授を務めておられる永田奈央美先生へインタビューを行いました。

教育工学という分野との出会いや、AI・データサイエンスを活用して人の学びをより良くする研究、静岡産業大学経営学部ならではの学びについてお話しいただいています。

先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?

私はもともと教育に興味があり、小学校の先生になることを目指していました。しかし、希望していた教育学部へ進学することができず、一度は教育の道を諦めようと思っていました。

そんな私に転機を与えてくださったのが、大学のゼミの先生でした。

先生から、「教育の問題を工学の技術を使って改善する『教育工学』という研究分野がある」と教えていただいたのです。

それまでの私は、「教育に携わる=学校の先生になる」という道しか考えていませんでした。

しかし教育には、「教える」だけでなく、より良い学びの方法や環境を研究し、新しい教育のあり方をつくっていくという道もあることを知りました。

この出会いをきっかけに教育工学という分野に興味を持ち、現在はAIやデータサイエンスなどの技術を教育に取り入れ、「テクノロジーによって人の学びをより良くするにはどうすればよいか」という研究に取り組んでいます。

振り返ってみると、教育学部に進学できなかったことは、当時の私にとっては大きな挫折でした。

しかし、その経験があったからこそ教育工学という分野に出会い、現在の研究につながったのだと思います。

研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。

研究者、そして大学教員という道を意識するようになったのも、大学のゼミの先生との出会いがきっかけです。

ゼミの先生から教育工学という研究分野を紹介していただいたときに、「教育について研究を続けて、将来は大学の先生になってみたらどうだい?」と声をかけていただきました。

それまでの私は、小学校の先生になるという夢を諦めたことで「教育に携わる」という将来もなくなってしまったように感じていました。

しかし、先生のその言葉によって、教育に携わる道は一つではないことに気づきました。そして現在、私は静岡産業大学で教育工学の研究をしながら、大学生の教育に携わっています。

高校生の皆さんの中にも、希望していた進路に進めなかったり、「自分には無理かもしれない」と思ったりすることがあるかもしれません。私自身もそうでした。

けれども、ある時の失敗や挫折が、その人の将来を決めてしまうわけではありません。思い描いていた道とは違う道に進んだからこそ、出会える人や学問があります。

そして、その出会いによって、思いもしなかった未来が開けることがあります。私にとっては、それが大学のゼミの先生との出会いであり、「教育工学」との出会いでした。

現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?

私が現在取り組んでいるのは、AIやデータを活用して、人の「学び」をより良くする研究です。

例えば授業の中では、積極的に発言できる学生がいる一方で、「質問したいけれど、うまく言葉にできない」「英語で質問するのは不安」「こんなことを聞いても大丈夫だろうか」と考えて、質問できない学生もいます。

そこで私は、生成AIを単に「答えを教えてくれる道具」としてではなく、人と人との間をつなぐ「媒介者」として活用できないかと考えています

つまり私が研究しているのは、「AIが人に代わって考える未来」ではなく、「AIの力を借りることで、人と人がもっと学び合える未来」です。

貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。

静岡産業大学経営学部では、経営を中心に、会計、地域ビジネス、AI・データサイエンス、観光・文化、スポーツビジネス、心理、ものづくりなど、さまざまな分野を組み合わせて学ぶことができます。

私が特に大切だと考えているのは、「興味のある分野だけで学びを完結させないこと」です。

データサイエンスの授業では、企業から実際のデータを提供していただき、学生が分析して、その結果を企業に提案する取り組みを行っています。

教科書のためにつくられたデータではなく、社会で実際に生まれたデータを扱うことで、「正解はひとつではない問題」に挑戦します。

貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?

AI・データサイエンスを学ぶために、「高校生のうちから難しいプログラミングができなければならない」と考える必要はありません。

それよりも私は、皆さんに「なぜ?」と思う習慣を身につけてほしいと思います。

「なぜこの商品は売れているのだろう?」

「なぜこの動画は人気なのだろう?」

「なぜ地域によって人口が違うのだろう?」

「AIはなぜこんな答えを出したのだろう?」

興味を持ったことを自分で調べ、考え、人に伝えてみてください。そして、生成AIもぜひ使ってみてください。

ただし、AIの答えをそのまま信じるのではなく、「本当にそうなのか?」と考える習慣を持ってほしいと思います。

AI時代だからこそ、「考える力」はますます重要になります。

進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。

高校生の段階で、「将来何になりたいか」を完全に決められなくても大丈夫です。

これから皆さんが生きる社会は、生成AIをはじめとする技術によって大きく変化していきます。

今はまだ存在していない仕事に就く人もいるでしょう。

だから、今の段階で将来を一つに決めることよりも、新しいことに興味を持ち、学び続けられる自分をつくることが大切だと思います。

大学では、高校までとは違う学問に出会い、企業や地域の人と出会い、海外の人と出会い、自分とは異なる考え方に出会います。その出会いの中から、自分が本当にやりたいことが見えてくることがあります。

AIはこれからますます進化します。しかし、AIが皆さんの人生の目的を決めてくれるわけではありません。

「自分は何に興味があるのか」

「誰のために何をしたいのか」

「どんな未来をつくりたいのか」

それを考え、選び、行動するのは皆さん自身です。