今回は、愛知県立大学で2028年4月の開設を構想している共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)の担当教員、竹中克行先生へインタビューを行いました。
地理学とランドスケープ研究、そして新設予定の共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)についてお話しいただいております。
目次
- 先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?
- 研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。
- 現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?
- その研究は、私たちの社会や日常生活とどのようにつながっていますか?
- 研究を進める中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
- 貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。
- 先生の授業やゼミでは、学生にどのようなことを大切にしてほしいと考えていますか?
- 貴学部に在籍する学生の特徴や雰囲気を教えてください。どのような学生が多いですか?
- 貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?
- 進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。
先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?
私の専門は、地理学を基盤に、地域や都市、ランドスケープ、人びとの暮らしの変化を研究する分野です。
地理学というと、地名や地図を覚える学問という印象があるかもしれませんが、実際には、ある場所で人びとがどのように暮らし、働き、地域をつくってきたのかを考える学問です。
この分野に関心を持ったきっかけは、身近な街や地域を歩きながら観察することの面白さでした。普段何気なく見ている道や川、商店街、住宅地、工場跡などにも、地域の歴史や社会の変化が刻まれています。
そうした風景の背後にある成り立ちを読み解くことに魅力を感じ、現在の研究につながっていきました。
研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。
研究者・教育者を志すようになったのは、大学で学ぶ中で、社会や地域を見る視点が大きく変わったことがきっかけです。
高校までの学びでは、正しい知識を理解し、答えを出すことが重視されることが多いと思います。しかし大学では、「なぜそうなっているのか」、「別の見方はできないのか」と問い直すことが大切になります。
私自身、そのような学びに触れる中で「研究とは単に知識を増やすことではなく、社会を見るための新しい視点をつくる営みなのだ」と感じるようになりました。
教育者としては、学生が身近な地域や社会を、それまでとは違った角度から見られるようになる瞬間に大きなやりがいを感じています。
現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?
現在の研究では、地域や都市のランドスケープがどのように形づくられ、またどのように変化していくのかを考えています。
ここでいうランドスケープとは、単に「きれいな風景」という意味ではありません。道路、川、運河、住宅地、商店街、工場、田畑、観光地など、私たちが日常的に目にしている地域の姿全体を指しています。
たとえば、ある街に古い商店街や運河、工業地帯が残っている場合、それは偶然ではありません。交通の発達、産業の変化、行政の計画、地域の人びとの暮らしなど、多くの要素が関係しています。
また、かつて物流や生産を支えた場所が、現在では観光やまちづくり、文化資源として見直されることもあります。
私の研究では、こうした地域の成り立ちを、現地調査、地図や資料の分析、関係者への聞き取りなどを通じて明らかにします。
大切にしているのは、地域を外から一方的に評価するのではなく、そこに暮らす人、働く人、行政、企業、市民団体など、さまざまな立場の人びとが地域をどう見ているのかを丁寧に理解することです。
その研究は、私たちの社会や日常生活とどのようにつながっていますか?
地域やランドスケープの研究は、私たちの日常生活と深く関わっています。
私たちは毎日、家の周辺、通学路、駅前、商店街、公園、川沿いの道などを使いながら生活しています。
そうした場所が安全で、歩きやすく、居心地がよく、地域の人びとが交流しやすいかどうかは、暮らしの質に大きく関わります。
たとえば、古い建物や街並みを保存するのか、新しく建て替えるのかという問題があります。
便利さを重視することも必要ですが、地域に蓄積されてきた記憶や文化をどう受け継ぐかも重要です。
人口減少や空き家、観光地の混雑、再開発などの問題も、地域をどのように守り、変え、次の世代につなぐかという問いと結びついています。
研究を進める中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
最もやりがいを感じるのは、現地を歩き、人の話を聞き、古い地図や資料を調べる中で、それまでばらばらに見えていたものがつながって見えてくる瞬間です。
最初は何気ない道や川、建物にしか見えなかったものが、調査を進めるうちに、地域の歴史や産業、人びとの記憶と結びついていることが分かってくることがあります。
風景が単なる背景ではなく、そこに生きてきた人びとの活動や選択の結果として見えてくる。その瞬間に、地域を研究する面白さを強く感じます。
貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。
2028年4月の開設を構想している共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)では、現代社会が直面する課題を発見し、その解決に向けて新しい社会的価値を生み出すための学びを行います。
地域の衰退、環境問題、人口減少、経済や産業の変化、多文化共生、デジタル化への対応など、現代の課題は複雑で、一つの専門分野だけでは解決できません。
共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)の特色は、政策科学、情報技術、経営学の三つの領域を統合して学ぶ点にあります。政策科学では、人間や社会が目指すべき方向や制度のあり方を考える学部です。
情報技術ではAIやデータ活用を含めて社会課題をとらえ、分析するための知識と技能を学び、また経営学では企業や組織がどのように価値を生み出し、事業やプロジェクトを実現するのかについて学びます。
また、情報活用力とコミュニケーション力を共通基盤として重視し、実践的な英語教育も段階的に行います。
地域社会や企業と連携した実践型プロジェクトを通じて、教室で学んだ知識を現場で活かし、関係者と協働しながら課題解決に取り組む力を養うことも特色です。
先生の授業やゼミでは、学生にどのようなことを大切にしてほしいと考えていますか?
私の授業やゼミでは、まず「自分で問いを立てること」を大切にしてほしいと考えています。
社会課題を考えるときには、与えられた問題に答えるだけでなく、そもそも何が問題なのか、誰にとっての課題なのか、その背景にはどのような社会の仕組みがあるのかを考える必要があります。
また、現場を見ることも重視しています。地域や社会の課題は、資料や数字だけでは十分に理解できません。
実際に地域を歩き、人の話を聞き、自分の目で確かめることで、初めて見えてくることがあります。
さらに政策や経営、技術の視点を関連づけて考える姿勢も大切です。
社会課題の解決には行政や企業、住民、技術、情報発信など、多くの要素が関わります。
学生には、調べる力、考える力、伝える力に加えて、異なる立場の人と協働する力を身につけてほしいと思います。
貴学部に在籍する学生の特徴や雰囲気を教えてください。どのような学生が多いですか?
共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)には、地域づくりやまちづくり、AIやデータ活用、ビジネスや起業、環境問題、国際的な課題など、多様な関心を持つ学生が集まってくると思います。
文系・理系という従来の区分にとらわれず、社会の問題を総合的に考えようとする学生に向いている学類です。
地域社会や企業と連携した実践型の学びでは、学生同士で議論し、役割分担をしながらプロジェクトを進める場面が多くなります。その中で、自分の意見を伝える力、他の人の考えを受け止める力、チームで成果をまとめる力が養われます。
最初から明確な将来像がなくても、学びやプロジェクトを通じて、自分の関心を少しずつ見つけていくことができます。
貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?
高校生の皆さんには、まず身の回りの社会に関心を持つことを大切にしてほしいと思います。
ニュースを見る、本を読む、地図を見る、街を歩く、人の話を聞く。こうした日常的な経験の中に、大学での学びにつながる問いがたくさんあります。
たとえば、自分の住んでいる地域を見ても、空き店舗が増えている場所、若い人が集まる場所、高齢化が進む地域、新しい施設ができている場所など、さまざまな変化があります。
それらを見ながら、「なぜそうなっているのか」「誰が困っているのか」「どのような解決策が考えられるのか」と考えてみてください。
学習面では、地理や歴史、公民はもちろん、数学や英語など幅広く学んでおくことが役に立ちます。
たとえば地理や歴史は地域や社会の成り立ちを理解する基礎になり、公民は政治や経済、社会制度を考える助けになるはずです。
数学や情報はデータやAIを理解する力に、英語はグローバルな環境で学ぶ力につながります。
そして国語力は、自分の考えを整理し、他者に伝えるための基本となる能力です。
進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。
進路選択で迷うことは、決して悪いことではありません。高校生の時点で、将来の仕事や専門分野を完全に決めることは簡単ではありません。
大切なのは、完璧な答えを急ぐことではなく、自分が何に関心を持ち、どのような社会をつくっていきたいのかを考え続けることです。
共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)での学びは、現代社会の課題に向き合い、新しい価値を創り出すための学びです。
地域の未来をどう考えるのか、AIやデータを人間の暮らしにどう役立てるのか、企業や組織はどのように社会に貢献できるのか。
こうした問いに関心がある人にとって、共創学群社会イノベーション学類(仮称・設置構想中)での学びは多くの発見を与えてくれるはずです。
大学は、知識を身につける場所であると同時に、自分のものの見方を広げる場所です。最初は漠然とした関心でも構いません。
身近な疑問や好奇心を大切にしながら、自分にとって意味のある学びを見つけてください。