今回は、デジタルハリウッド大学デジタルコミュニケーション学部デジタルコンテンツ学科で教授を務めておられる橋本大也先生へインタビューを行いました。
生成AIを「知の増幅装置」として使いこなす研究や、AI時代に高校生が身につけておきたい学びについてお話しいただいています。
目次
- 先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?
- 研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。
- 現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?
- その研究は、私たちの社会や日常生活とどのようにつながっていますか?
- 研究を進める中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
- 貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。
- 先生の授業やゼミでは、学生にどのようなことを大切にしてほしいと考えていますか?
- 貴学部に在籍する学生の特徴や雰囲気を教えてください。どのような学生が多いですか?
- 貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?
- 進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。
先生が現在の専門分野・研究テーマを選ばれたのは、どのようなきっかけがありましたか?
テクノロジーの世界では、およそ20年ごとに社会を根本から変える巨大なイノベーションが起きてきました。
1回目は1980年代のパーソナルコンピュータ(マイコン)、2回目は2000年頃のインターネットの普及です。
そして2020年代、3回目のイノベーションとして現れたのが「生成AI」でした。
この生成AIという技術は、これまでの歴史の中でも類を見ないスピードで社会に浸透しており、まだ誰も未来の完全な姿が見えていない「未踏の領域」です。
まるで宇宙探査に出かけるような毎日のワクワク感に魅了され、この技術をどう学びやビジネスに生かすかという研究に没頭するようになりました。
研究者・教育者を志されたのはいつ頃でしょうか?そのきっかけとなった出来事や人物がいれば教えてください。
私はもともと、ビッグデータと人工知能の技術ベンチャー企業「データセクション株式会社」を創業し、同社を上場させた事業家でした。
しかし上場後に顧問へ就任した際、「教育とITの領域でイノベーションを追求し、これからの時代を担う若者たちにテクノロジーを使って世界を変える面白さを直接伝えたい」と強く思い、教育の世界へ踏み出しました。
生成AIの登場によって、従来の知識や実績の差を飛び越えて若い世代が成果を出せる「下剋上」の時代が来ています。
自分自身の経験をもとに、若い皆さんがテクノロジーという武器を手に入れて社会にイノベーションを起こす手助けをしたいと考えたことが、教育者を志した一番のきっかけです。
現在取り組まれている研究テーマについて、高校生にもわかりやすくご説明いただけますか?
現在特に力を入れているのが「プロンプトエンジニアリング」と「生成AIを活用した教育・思考法」の研究です。
プロンプトとは、AIから正確で効果的な応答を引き出すために、最適な指示を設計する技術のことです。
実は、生成AIの本質は「次にどんな言葉が来る確率が高いかを計算して文章をつなぐツール(確率作文マシン)」です。
AI自身が意志を持って人間のように考えているわけではありません。
しかし、人間が適切なプロンプトを与えることで、AIは人間の持つわずかなアイデアや知識を何十倍にも広げる「知の増幅装置」になります。
人間とAIがどう対話すれば最高のパフォーマンスを引き出せるのか、その「言葉の作戦術」を研究しています。
その研究は、私たちの社会や日常生活とどのようにつながっていますか?
生成AIはすでに、文章作成、デザイン、データ分析、プログラミング、動画制作など、あらゆる知的作業のプラットフォームになっています。
皆さんが将来どのような職業に就いたとしても、AIと無関係でいることはできません。
しかし、AIを使いこなすためには「人間側の監督責任」や「元の知識(ドメイン知識)」が不可欠です。
AIは時に事実に基づかない情報(ハルシネーション)を出力するため、最後は人間が内容の正しさを監督し、見極めなければなりません。
AIという便利な道具を正しく使いこなし、社会でより高い価値を生み出すための人間自身の能力開発に、私の研究は直結しています。
研究を進める中で、最もやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?
生成AIを「思考のパートナー(壁打ち相手)」として活用し、自分一人では絶対に到達できなかった新しいアイデアや視点がひらめいた瞬間です。
私はこの1年間で3冊の本を執筆しましたが、アイデアが行き詰まった時にAIと壁打ちを行うことで、思考のブレイクスルーが起こり、執筆がスムーズに進みました。
人間の情熱や課題意識と、AIの持つ膨大な情報処理能力が掛け合わさり、創造性が爆発的に増幅する体験を得られた時に、研究者・教育者としての大きな喜びを感じます。
貴学部では、どのような学びができますか?他大学にはない独自の強みや特色もあわせてお聞かせください。
デジタルハリウッド大学は、デジタルコミュニケーション学部デジタルコンテンツ学科のみを設置する「1学部1学科制」という、非常にユニークな仕組みをとっています。
3DCG・VFX、ゲーム・プログラミング、映像・映画、グラフィックデザイン、アニメ、Webデザイン・Web開発、VR/AR・メディアアートといった「デジタルコンテンツ」と、ビジネスプランやマーケティングなどの「企画・コミュニケーション」を、垣根なく幅広く学べるのが特徴です。
また、新しいテクノロジーを禁止するのではなく、積極的に活用して効果的な表現や成果を生み出すことを推奨する文化があります。
教員陣も産業界の第一線で活躍する現役の実務家ばかりで、先端技術を楽しみながら研究しています。
最先端のテクノロジーとクリエイティブを融合させ、未来を切り拓く実践的な力が身につくことが、デジタルハリウッド大学独自の強みです。
先生の授業やゼミでは、学生にどのようなことを大切にしてほしいと考えていますか?
授業では「AIを単なる楽をするためのチートツールで終わらせないこと」を徹底して伝えています。
生成AIは、熟練した大工が使う「大工道具セット」のようなものです。
道具だけがあっても、使い手自身に基礎的な知識や質的な知識がなければ、出来上がったものの良し悪しを判断できませんし、プロの成果物は作れません。
だからこそ学生には、自分の専門分野の勉強や教養を怠らないこと、そしてAIを「1万時間」使い倒すくらいの勢いで触り続け、AIの特性を感覚的に理解し体に染み込ませる(内面化する)姿勢を大切にしてほしいと伝えています。
貴学部に在籍する学生の特徴や雰囲気を教えてください。どのような学生が多いですか?
一言で言うと「遊ぶように学ぶ」姿勢を持った学生たちが多いです。
教科書の正解を覚えるだけではなく、新しいツールや技術が登場すると、教員よりも先に自分で触って試行錯誤を楽しんでいます。
授業で生成AIを使った企画書の作成課題を出すと、多くの学生が実際のビジネスで使用されるキーワードやフレームワークを上手に取り入れ、見違えるような質の高いアウトプットを出してきます。
また、キャンパスには世界49か国・地域出身の留学生が在籍しており、非常に多様性にあふれています。
多種多様なバックグラウンドを持つ仲間と刺激し合いながら、自分の「好き」を自由に追求できる、オープンで活気ある雰囲気です。
貴学部への進学を考えている高校生に対して、今のうちに経験・学習しておくとよいことはありますか?
もしソフトウェアエンジニアやAIを活用する人材を目指すなら、「Python(パイソン)」というプログラミング言語と「英語」の2つをしっかり学んでおくことを強くおすすめします。
この2つを身につけておけば、約10年は仕事が続けられます。
さらに、Pythonを扱う土台として、数学の「確率」と「数列」も学んでおくと非常に有利です。
また、技術的な知識だけでなく、自分の「好きなこと」や「夢中になれる分野」を一つ作っておくことが大切です。
深いドメイン知識(専門性)や独自の関心がある人ほど、AIを使った時に誰にも真似できない強力な成果を生み出すことができます。
進路選択に迷っている高校生へ、メッセージをお願いします。
生成AI時代の到来は、若い皆さんにとって最大の「下剋上のチャンス」です。
これまでの社会のルールや大人の常識が通用しなくなり、誰もが同じスタートラインに立って未来を模索しています。
私の著書にも書きましたが、「頭がいいのはあなたです。生成AIではありません」。
AIはあくまで、あなたの思考や創造力を何倍にも広げてくれる最高のパートナーに過ぎません。
自分の可能性を狭めず、最新のテクノロジーを恐れずに面白がって触ってみてください。
あなたの情熱とAIの力を掛け合わせれば、想像を超える未来を必ず創り出すことができます。
進路に迷った時は、まず頭で考えすぎず、興味のあることや最新のテクノロジーに直接触れてみてください。
実際に手を動かして試行錯誤する中で、自分でも予想していなかった「本当にやりたいこと」や、新しい自分の可能性が見つかるはずです。
これからの時代に求められるのは、与えられた問いに答える力ではなく、AIという相棒とともに自ら問いを立て、新しい価値を発明していく力です。
デジタルハリウッド大学には、予測不能な未来を自分らしく生き抜く力を身につける環境と、熱い教員陣が揃っています。
皆さんとキャンパスで一緒に学び、新しい未来を発明できる日を楽しみにしています。