HOME > 司法試験・予備試験 > 司法試験 | 傾向と対策 > 司法試験 傾向と対策 | 短答式試験の出題傾向と対策

司法試験 傾向と対策 | 短答式試験の出題傾向と対策

 司法試験・司法試験予備試験の短答式試験の出題形式・特徴,出題傾向を踏まえ,その対策を説明します。なお,平成27年度から司法試験は,商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法が試験科目から外れ,憲法・民法・刑法の3科目だけとなりました。また,平成26年度までの出題実績では,司法試験と司法試験予備試験の問題は7~8割程度共通していました。
 法科大学院入試では,短答式試験(法学既修者試験)を必須とする大学院とそうではない大学院に分かれるのですが,必須とする大学院を受験される方(あるいは,任意に提出しようと考えている方)にとっても有益な情報となります。

法律基本科目

総論

 司法試験・司法試験予備試験の短答式試験においては,記述の正誤を問い,正確な法律知識を備えているのかを試す問題が多く出題されています。特に,短答式試験でしか問われない独自の細かい知識(これを司法試験受験界では,「短答プロパー知識」と呼んでいます)を問う問題が出題されています。
 そのため,論文式試験と共通する基本的な知識の他,短答プロパー知識についてもしっかりとマスターしていく必要があります。
 一方で,短答式試験では,論文式試験ほどの高度な思考力は要求されず,また,解答の形式もマークシート式なので,知識のインプットさえしっかりとなされていれば,一定程度の得点を取ることはできます。
 ただし,上記のように少なからず論理操作を求める問題が出題されています。
 また,人間の記憶力には限界がありますので,どうしても記述の正誤が分からない場合に,頭を使って判断しなければならないという場面にも遭遇します。
 そのため,知識を中心として問う出題傾向だからといって,知識だけで押し切ろうとするのではなく,インプットしなければならない知識の範囲をある程度絞り込んだ上で,後は論理的思考力を養成することで得点を伸ばしていくという方法がベストです。

各科目の勉強法

 以下では各科目の勉強法について説明します。こちらはある程度学習が進んでいる方を対象としているので,これから学習を始める方は飛ばしてしまってください。

憲法(司法試験・司法試験予備試験)

 憲法は,例年,判例知識の正確な理解が問われています。
特に人権分野ではその傾向が顕著で,百選掲載判例については,結論だけではなく,判旨の論理や理由まで理解することは最低限必要であるといえます。もっとも,判例の細部にわたる理解が問われることがあること,4つの選択肢すべての正誤を判定しなければ正解に至ることができないものもあることから,人権分野において高得点を望むことはなかなか難しいものと思われます。そこで,対策としては,過去問で繰り返し問われている判例を素材とする選択肢・問題は必ず正解し,その他の細かい知識を問う肢は部分点狙いで得点していくことをおすすめします。
 これに対して,統治分野においては,重要判例の理解を問う問題に加え,単純な条文問題も出題されます。そのような問題で確実に得点することで,安定した得点を取ることが出来るでしょう。
 憲法の短答式試験対策としては,人権分野では,判例知識を問われることがほとんどであるため,まずは重要判例の判旨を正確に理解することが挙げられます。また,細かい知識を問う問題については,あまり時間をかけ過ぎないよう注意しつつ,部分点を狙っていくことで十分でしょう。統治分野では,過去問で繰り返し問われている重要判例を理解しつつ,単純な条文問題で確実に得点することが必要になります。

行政法(司法試験予備試験)

 行政法も,憲法と同じく判例の知識を中心に聞かれることが多いといえます。そのため,有名判例については,判旨の結論部分だけではなく,どのような論理によりどのような結論を導いたのかについて正確に理解することが重要です。もっとも,憲法とは異なり,深く理解する必要のある判例の数はそこまで多くありません。よって,効率よく得点するためには,過去問で繰り返し聞かれている重要判例については論理や理由まで理解し,その他の判例については結論部分だけ暗記することでも十分対処することができるといえます。
 また,行政法では,特に行政救済法分野の条文知識も問われることが多いです。これらの条文は,数もそこまで多くないため,確実に得点する必要があります。そこで,条文の素読に加え,行政上の救済措置としていかなる手段があるのか,また,訴訟要件や本案勝訴要件は何か等について自分のまとめノート等に事前に整理しておくことをおすすめします。これは,短答式試験だけではなく論文式試験で出題される訴訟選択の問題においても役立つ知識になります。

民法(司法試験・司法試験予備試験)

 民法は,特定の分野に偏ることなく,全分野から万遍なく出題されます。また,条文知識に加え,判例の理解を問う問題,実際の事例が与えられ,条文や判例を当てはめた場合の結論を問う問題といったように,様々な形式で出題されるため,対策が非常に難しい科目です。よって,民法の短答の勉強を始めた頃は,その量の多さに戸惑ってしまう方も多いです。
 もっとも,確かに出題範囲は広いですが,問題自体は基本的なものが多いため,一度知識を定着させてしまえば点数が安定しやすい科目です。そのため,過去問を繰り返し回すことで知識を定着させ,何度も聞かれている肢については確実に得点していくことが必要です。
 また,民法で高得点を狙うためには,家族法についてもしっかりとした勉強を行う必要があります。もっとも,短答式試験に割くことができる時間的制約もあるため,細かい知識にまでは手が回らない方も多いと思います。そこで,最低限の対策としては,家族法については,過去問で聞かれた肢の正誤の判断のみ出来るようになる程度に止めておき,総則,物権,債権の分野で確実に得点していくという方法でも,合格点を狙うことは十分に可能です。

商法(司法試験予備試験)

 商法は,会社法を中心として,手形・小切手法,商法総則の分野から出題されます。商法で合格点を狙うためには,まずは会社法をしっかりと勉強する必要があります。
 会社法では条文知識が中心に出題されるため,過去問での演習が不可欠となります。もっとも,会社法は,条文一つ一つが非常に長かったり,規定の仕方が複雑であったりするため,闇雲に暗記しようとするのは限界があります。そこで,おすすめの勉強法は,ある規制や手続きが規定されている場合に,なぜそのような規制や手続きが要求されているのか(例えば,なぜ株主総会普通決議ではなく特別決議が必要なのか等)について,自分なりに理由をつけつつ暗記することです。理由をつけて暗記するだけでも定着率は格段に上がるため,普段の勉強から,常に理由を考える癖を付けておくことが重要であると言えます。とはいえ,商法の短答式試験対策に割くことができる時間は限られているので,過去問で問われた知識についてだけ上記の対策をし,他はある程度捨てるということでも止むを得ません。
 また,論文式試験対策としてはマイナー分野として位置付けられる手形法・小切手法,商法総則・商行為法からも一定数の問題が出題されます。そのため,商法で高得点を望む場合には,これらの分野でも点数を稼がなければなりません。
 もっとも,出題数の多い会社法分野の対策がメインとなることは間違いありませんので,手形法・小切手法,商法総則・商行為法については,過去問で問われた知識のみ正確に理解し,得点するということで十分だと考えるべきでしょう。
 結局,商法は最も高得点を狙いにくい科目なので,ある程度の割り切りは必要ということです。
 なお,会社法は平成26年に改正があった影響で,過去問の中には正解が存在しないものもあります。過去問集等は必ず改正会社法に対応したものを使うことが必要です。

民事訴訟法(司法試験予備試験)

 民事訴訟法は,判例知識・条文知識が万遍なく問われます。
 条文知識を勉強する際に意識すべきことは,手続きの流れを想像しながら勉強することです。自分が解いている問題が,訴訟の開始に必要とされる手続きなのか,審理過程において必要とされる手続きなのか,それとも訴訟の終了において必要とされる手続きなのかを常に意識しながら,条文に立ち返りつつ勉強する必要があります。また,なぜそのような制度・条文となっているのか理由を考えつつ知識を覚えていくことも重要です。
 判例知識は主に百選掲載の重要判例を素材として問われており,事例問題として判例の結論を問う問題も出題されています。百選掲載判例については,他の科目と同様,結論だけではなく,その理由等,論理の流れもしっかりと理解しておくようにしましょう。

刑法(司法試験・司法試験予備試験)

 刑法では,主に判例知識を問う問題が出題されます。判例知識を問う問題では,具体的な事例が与えられ,判例の立場からの結論や正誤を問う問題が多く,論文式試験と類似の出題がなされています。
 そのため,論文式試験対策をしっかりと行うことが,そのまま短答式試験対策に繋がります。論文式試験用の知識・理解で例年6割~7割程度得点することが可能です。
 もっとも,短答式試験では,論文式試験では出題されない細かい構成要件の理解を問う問題も出題されていますので,高得点を狙うためにはこのような問題でもしっかりと得点できなければなりません。その対策としては,その構成要件が適用される典型的な事例を押さえると共に,判例を中心に個別の構成要件要素の解釈を理解することが重要です。
 また,最近の傾向として,複数の学説が示され,それぞれの見解からの結論を問う論理問題が出題されることが多くなっています。旧司法試験においてよく出題されていたタイプの問題です。
 このタイプの問題は,事前の知識がなくても現場思考で解くことが出来るため確実に得点したいところです。もっとも,知識問題とは異なり,現場での処理時間が必要になるため,解くのに時間がかかります。そこで,知識問題を解き終わった後に,時間をかけて確実に正解するという取ることがおすすめです。
 刑法は,論文式試験対策をこなすだけである程度の得点が望めるだけでなく,難解な問題が出題されることが少ないため,確実に得点源にしていきたい科目です。もっとも,上記のように,解答に時間がかかる問題があり,時間不足に陥りがちですので,時間配分には十分注意する必要があります。

刑事訴訟法(司法試験予備試験)

 刑事訴訟法は,捜査法の分野において判例知識が,公訴提起以降の分野においては条文知識が主に問われる傾向にあります。
 前者においては,刑法と同様に論文式試験対策が短答式試験対策に直結するため,特別な対策は不要です。
 後者においては,特定の知識が繰り返し問われる傾向にありますので,過去問で問われた条文知識を理解し,暗記すれば十分高得点をとることが出来ます。
 刑事訴訟法も,刑法と同様に比較的解きやすい問題が出題されるため,得点源としたい科目です。

一般教養科目(司法試験予備試験)

 
一般教養科目は,人文科学,社会科学,自然科学及び英語が出題範囲となっています。どの範囲の問題も難易度が高く,付け焼刃的な対策では歯が立ちません。例えば,自然科学の中には,物理が含まれるのですが,理系出身で高校生の頃に物理を選択していた方であれば,何とか対応できるといったレベルの問題が出題されます。その上,範囲が広く,司法試験では出題されない分野です。
 そのため,多くの受験生がほとんど何も対策をせずに試験に臨みます。
 そこで,ほとんど事前の対策をせずに,一般教養科目の平均点である24点~30点程度(60点満点)を目指すというのが,多くの受験生にとっての現実的な目標になります。ちなみに,合格点が170点の場合,24~30点を一般教養科目で稼げるとすると,残り140~146点(7割弱)を法律基本科目で得点すればよいということになります。これはそこまで難しい話ではありません。
 では,その24点~30点を稼ぎだすためにどうすればいいのかということになります。
 まず,マークシートで解答する形式なので,適当にマークをするだけでも,20問中3,4問は正解になります。1問3点なので,これだけで9点~12点になります。
 残り12点~21点(3問~7問)ですが,上記のように,実は事前知識が無くても,時間さえかければ解ける問題が数問出題されています。それらの問題は,多少処理に時間がかかってもいいので,確実に正解できるようにしましょう。過去問だけで構いませんので,それらの問題を解いて,訓練を積んでおいてください。
 他にも,英語がある程度できるということであれば,英語の問題を選択して点数を稼ぐことも可能です。もちろん,日本史や物理など,その他の科目ができるのであれば,そこから点数をもぎ取るという戦略でも構いません。
 ちなみに,司法試験予備試験の短答式試験には,いわゆる「足切り」がありません。そのため,仮に10点前後しか採れなかったとしても,法律科目で+10点,15点稼げば合格点に達することが可能です。一般教養科目は「点数が採れればラッキー」くらいに気楽に考え,その分法律基本科目で8割,9割の得点を目指していきましょう。短答式試験対策で身につけた細かい知識が論文式試験で役立つこともありますので,論文式試験対策にならない一般教養科目の対策を講じるよりも,その方がよほど合理的です。